「すき」

 私の初めてのバイト。

 それは、ドリカムのコンサートスタッフの仕事だった。

 石狩湾新港に突然「遊園地」を出現させ、コンサートはもちろん、「そこへ行く喜び」をお客さんに味

わってもらうことを狙った不思議なコンサートだった。

 先日のブログで、「ある曲」のことを書いた。

 そのCDが欲しかった私は、何でも良いのでバイトを探していた。

 雑誌で「コンサートスタッフ募集」を見つけ、「ふん、こんなのも良いな」と応募、合格。

 札幌の市民会館前から大型バス○台で現地へ。

 現場からの指示(どこどこに何名等)を受けての物資の搬入が、私のメインの仕事だった。

 おもしろいもので、ほぼ全てが見知らぬ者同士なのだが、働いているうちに自然に、「グループ」がで

きていく。「何名来て下さい」と仕事がくると、その単位で動いていくようになるのだ。

 仕草やちょっとした言葉のやりとりで、相手との距離をはかり、仮のグループができる。

 2名が4名になり、グループが結合することもある。

 会話を深めていく中で、両者が「合わない」ことが分かってくると、他のグループへ・・・。

 時間がたっていくほどに、しっかりとした「まとまり」になっていく。

 短期間で「集団」が出来ていく過程は、感動的ですらあった。

 保護者が転勤族で、小学校、中学校と、何校も渡り歩いた私は、「集団」について、ある種の「恐怖」

があった。

 「アルバイト」というのは、「目的」が実に明確である。

 「仕事」があるから、募集する。

 募集に応じたメンバーは、その仕事に「やる気」がある(だから応募した。お金も欲しいし。)。

 「やること」が一つで、「やる気」もある。これが良質(?)な「集団」を生む素地なのだろう。

さて、
 
 そのバイトには、休憩もあり、定期的に弁当・飲み物が届く。

 食べたい人は「食べ放題」という、一種異様な状態だった。「餌付け」という感じ。

 「遊園地」から「コンサート」へと時は流れていく。

 歌声が会場を包む。

 「客」ではないので、あまり聴かないようにし、仕事を自分から求めるようになる。

 そうしてまた時間はたっていく。
 
 
 物資の移動も一段落し、一息ついた。そんな時。
 
 「すき」が会場に流れた。

 
 暗い待機場所で、皆好きな格好でくつろいでいる。地べたに座る者、いすでだらーんとしてる人・・。

 曲を聴き、ほんのりと良い気分になった。今日、来て良かった。と思った。

 その間だけ「客」になってしまった私。

 バイト代の返還はご勘弁下さい。時効です。