「明日、入学式の娘へ。」

産声が、まだ耳に残っている。

 私たち夫婦から生まれたあなたが、

 頼りない足取りながらも、明日「義務教育」の門をくぐる。


 心配は尽きない。

 これまでの人生で、限りないことを学んだはずだ。あなたは。

 立ち会ってきたはずなのに。私は。

 
 それでも漠然とした不安が、消えない。

 「子」が離れていく予兆を感じて、といった感傷から来るのではない。

 「ここ」までに備わった力が「学校」の中で通用するのか、生きるのかということなのだ。


 答えがないのは分かっている。

 「社会」への一歩となる小学校。

 躓いたからといって、どういったこともないのだし。そんな時は、ちゃんと支えてあげるから。


 ここまで成長したことが、まずうれしい。

 へその緒のバンソーコーが、傷が化膿してなかなか取れなかった、生まれたての時。

 テレビ台の縁に頭をぶつけて「縫合」する羽目になったこと。

 絵の進歩。

 足がはやくなったこと。

 よくもまぁ・・・。

 
 学校が不安らしい。

 ずっと子どもでいたいのだそうだ。

 その希望は叶わない。小学校卒業の日に、また聞いてみたい。「今の希望は」と。


 あなたに私からの望みはない。

 あなたの人生だから。

 ただ少しでも「楽しく」やれたら。ただそれだけである。


 おめでとう。明日が楽しみです。