中島みゆき「誕生」に思う。

 「恋」の歌である。

 しかし「恋」の範疇を超えた歌である。

「あんたに恋の何が分かるっていうのさ」という人には、「私見」ということで勘弁してもらいたい。


 誰しも人生一度しか経験のない「誕生」の機会。

 一言で言うならば「あなたが生まれてきてくれて、私はうれしい」という歌である(と私は思ってい

る)。

 ことばでは言えないモノが、詰まっている。

 震えるほどの感動を感じたことがあるだろうか。

 多くを語っているわけではない。

 むしろ「うれしい」ということしか言っていない、歌ともいえる。

 日常私たちが思う「うれしい」の中には、それだけではない何かがくっついていないだろうか。
 
 「でも、こうだったらもっと」とか「まぁまぁかな」とか。

 人は「うれしい」一つに感情を特化することができるものなのか。

 体の中は「うれしい」思いのみ・・・。
 
 そうそうあることじゃない。

 この歌には、「本当の」感動のかたちが込められていると私は感じるのだ。

 「人間平等」という観点からすれば、恋の「相手」は対等の立場である。

 しかし、この歌での「私」は、ただひたすらに相手を賛美する。

 人柄でも、地位でもなく、その「相手」の人生がスタートした点を。

 このように「相手」に思われたい、と思うわけではない。

 ただ、中島みゆきさんが込めた感動の大きさに感動するのである。

 私もこんな風にものを考えられたら、と。

 人生がさらに豊かに感じられそう、と。

  

 今、また確かめるように聴いている。