「皆川賢太郎 のドキュメントが見たい。」

 「棄権」

 ただの二文字だが

 私には 多くを物語る 二文字だ


 開幕前

 彼のドキュメントを見ていて

 その視線の先に 何かが見えているのを感じた


 生活の全ての延長に 

 スキーがあって

 オリンピックがあって…


 彼も人間だから

 ドキュメントは ドキュメントであって

 作られたイメージも 当然あるだろうが

  
 その当然ある 虚構の世界を

 割り引いても

 彼が 今回のオリンピックで やろうとしたことは よく分かる


 単純で

 まっすぐだ

 「勝つ」こと


 一般ピーブルの私が 絶対追い切れない

 「勝つ」ことに

 彼は全てを賭けられる環境を 引き寄せていた

 
 羨望と

 あこがれを胸に

 この日を 私は待っていた


 衆目の結果は そうたいしたことではない

 私は

 もうすぐ36歳だが

 
 本当の結果が その過程にあること 

 それを 最近 頭から 理解できる

 結果もそう そこまでの 彼の戦い全てが 彼の「価値」だ


 アルペンスキーの細かなものなんて 知らない

 ただ 彼らが スタートを切るその瞬間から

 私たちは胸を高鳴らせる


 気が付いたら もう一日らしいが

 なんだかさびしい

 ただ これからだ


 選手達の 一人一人の物語が 

 今後語られる

 オリンピックは 終わっていないのだ