「激闘!回転寿司~一皿の美学~」

 今だ!と思った時には 違う場所からの声

 家族のため 頼まねばならぬ

 何しろ久しぶりだ 


 ボックス席待ちの客が 業を煮やしてカウンターへ

 1,2,3,4,~6名!

 心の奥底で この寿司屋にはキャパオーバーだ と叫ぶ


 軍艦は奥の調理場で作るから

 気楽に声を出せる

 しかし ここは寿司屋だ 握りが食えずして 何が寿司屋だ


 回転中のものを取るべきか 

 「握ってもらいたい」が本音だが

 一皿妥協する

 
 先ほどの団体客は 待ち疲れからか 立て続けの注文

 お腹もすいてんだろうなぁ

 分かったつもりで 微笑みを浮かべ 一段落するのを待つ


 今か?

 「こはだ1枚」

 やられた 隣の客だ


 次か

 「こはだ1枚さび多め」

 一緒に頼んでくれよ


 途中で団体客から 鉄火巻きの複数注文

 「巻き」はだめだって

 何秒かかるのか 分かる?
  

 巻きの間にも 別テーブルから注文が

 職人さんが注文暗唱モードに

 よし 呪文の中に入れてもらおう


 
 今決断の時

 

 裂帛の気合い

 「ほたて」と叫ぶ

 流れを読み切って頼んだつもりが 次の次の次になり 忘却の彼方へと

 
 再び「ほたて!」

 
 


 「おあいそ」に気合いはいらない